ファイアローに関するあれこれ

 ファイアローが強いポケモンであることはもちろん自明です。自分もそう思っていたので、「強いポケモンであるファイアローは積極的に採用しよう」と思って使っていました。しかし、使っているうちに、「果たしてそこまで言われているほどのポケモンなのか?」という疑問を持つようにもなりました。

 どういうことかというと、ファイアローは大して高くもない種族値のほとんどが、特性によって意味をなさないSに吸われており、根本的な種族値量が圧倒的に低いのです。実質種族値を計算すると270という数値が出ます。これはエルフーンの292よりも一回り低いほどの低水準です。実際に、アローがブレイブバードを1回打っただけで簡単に倒されてしまうほど貧弱なポケモンであることは、ほとんどの人が体験していることかと思います。

 では、大した打点も出さずに1回動いて死んでいくファイアローというポケモンが、なぜこんなにも強いポケモンとして知られているのでしょうか?疾風の翼はもちろん強力ですが、相手を倒せなければ先制する意味はないですし、また、相手に倒されないなら先制する意味はありません。彼我の行動回数が変わらないなら、Sが高い意味はないのです。なので、単体飛行打点を使いたいと思った時に、ファイアローが最強であることは必ずしも自明とは限らないはずです。

 思うに、その理由の1つに、「ファイアローより数値の高い単体飛行技使いが少ない」というものがあるのではないでしょうか。メガボーマンダが明らかにそうですが、彼は実際によく使われているので除外します。

 まず、飛行技の威力を考えた時、ブレイブバードと同じ水準で威力の高い技はほとんどありません。

 ①ブレイブバード

 ②アクロバット

 ④ゴッドバード

 ③暴風

 このあたりでしょうか。どれも癖のある技ばかりです。アクロバットはジュエルが無い6世代では持ち物を能動的に消費する手段が限られるので使い勝手が悪いですし、ゴッドバードも持ち物が数値補正の乗らないパワフルハーブで固定され、暴風は命中不安です。そして、これより下は一気に燕返しエアスラッシュまで落ちます。

 なので、ブレイブバードを使えるポケモンについて、その実質種族値を比べていこうと思います。

 比べる条件は以下です。

 ①持ち物、特性補正込み

 ②AS実質種族値で比べる

 ③持ち物はスカーフor鉢巻

 ④アローは合計種族値を+30して考える

 ③は、単純な数値を比べるためにこうします。アローと同じ挙動をさせるために、スカーフを持たせて先制することを想定しています。

 ④は、アローはSに降らなくても先制できるため、Hに振る余裕があり、実際の種族値は+30して考えることができるからです(Sに振るアローも存在しますが、とりあえず考えないことにします)

 では、計算結果は以下になります。 

 

ポケモン名-実質種族値-持ち物

ファイアロー-369-鉢巻

クロバット -308-スカーフ

      -366-鉢巻

バルジーナ -350-スカーフ

ウォーグル -348-スカーフ

      -422(負けん気発動)-スカーフ

ムクホーク -335(捨て身)-スカーフ

エアームド -329-スカーフ

 

 これより下は元々の種族値が30ほど離れるので除外します。

 驚くべきことに、一般ブレイブバード使いで最もステータスが高いポケモンファイアローであるという結果が得られます。唯一ウォーグルだけが明確に逆転する余地を残しますが、基本的にはアローの方がステータスが高いのです。

 ここからわかることは、アローはやはり飛行ポケモンの中で最強であるということです。お疲れ様でした。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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 本当にそうでしょうか?

 ブレイブバード使いの中では、という括りで考えれば確かにそうかもしれませんが、暴風やゴッドバード、アクロバット使いを除外しても、本当にいいのでしょうか?

 例えば、雨下なら暴風が必中で使えます。暴風使いにはカイリュートルネロス、ファイヤーという高種族値ポケモンが多いです。ゴッドバードやアクロバットは、両採用すれば無理なく威力の高い飛行技が使えます。スカーフを持てないことで先制できない問題も、追い風をすれば解決しますし、そもそも先制することはポケモンバトルにおいて必須ではありません。これらは構築の組み方でいくらでも対応できる要素です。「なんの脈絡もなく先制して打つ安定飛行技」の中ではアローが最強であることはほぼ自明であるようですが、それに拘らず、もっと視野を広げて比べてみるとどうなるのでしょうか?

 暴風、ゴッドバード、アクロバット、ついでにエアスラッシュ使いについても、その実質種族値を比べてみます。

 

ポケモン名-実質種族値-使用技-持ち物

ファイアロー-369-ブレイブバード-鉢巻

ファイヤー -403-暴風-スカーフ

      -358-エアスラッシュ-スカーフ

フリーザー -423-暴風-スカーフ

カイリュー -399-暴風-スカーフ

      -468-暴風-眼鏡

トルネロス-371-暴風-スカーフ

      -437-暴風-眼鏡

      -329-エアスラッシュ-スカーフ

オンバーン -354-暴風-スカーフ

      -417-暴風-眼鏡

      -313-エアスラッシュ

アーケオス -392-ゴッドバード-パワフルハーブ

      -310(弱気)-同上

      -357-アクロバット-無し

トゲキッス -473(張り切り)-ゴッドバード-パワフルハーブ

      -382-エアスラッシュ-スカーフ

      -431-エアスラッシュ-眼鏡

ルチャブル -351-ゴッドバード-パワフルハーブ

      -384(H振り)-同上

      -319-アクロバット-無し

      -349(H振り)-アクロバット-無し

 

 エアスラッシュはともかくとして、暴風とゴッドバードについてはかなりの高水準を出すことができていますね。解説しておくと、ブレイブバードは反動ダメージがあるので、実際の技威力ほどダメージレースの有利さが無く、それが計算結果に反映されています。単純な与ダメ被ダメだけで比べると、こういう結果が出るということになります。

 この結果から私は、ファイアローというポケモンを、以下のようなポケモンであると考えました。

①入る構築を選ばない

②どんな状況でも強さが安定している

③数値自体は低めなポケモンである

 このうち、②は明確にファイアローの強みと言えますが、①と③に関してはどうでしょうか?入る構築を選ばないというのは便利でいいですが、それはそのまま、「その構築にファイアローを採用する必要が、必ずしも無い」ということを意味します。数値も低めであるファイアローは、「強いポケモンだから」という理由で無条件に採用されるポケモンでは無さそうです。ニンフィアランドロスギルガルドを採用するのとは、少し話が変わってくるのではないでしょうか?

 もしかすると、今までファイアローを採用していた枠に、カイリュー、ファイヤー、トゲキッスといった高種族値ポケモンを採用することで、また違った挙動、違った強みが発見できるかもしれません。雨パなら自然に暴風を採用できるので特にそうですね。

 以上です。